ドイツ生活 徒然記

ドイツでの生活も6年目がスタート。日々体験したことや感じたことを書いていきます。

ドイツにおけるコロナウイルスワクチン接種について

久しぶりの更新になってしまいました。5月に入ってから一度は25度まで気温が上がるほど暖かい陽気に恵まれたドレスデンですが、今日も少しひんやり。もう5月半ばですが、いつになったら初夏を感じられるのか…。

さて、今日はコロナウイルスワクチン接種について書きたいと思います。

<目次>

ドイツのコロナウイルスワクチン接種状況

昨年の12月27日からワクチン接種がドイツで開始されてから4ヶ月以上が経過し、現在は人口の約36.5%が少なくとも1回目のワクチン接種を終えています。(ジョンソンアンドジョンソン社のワクチン以外は2回の接種が必要とされています。)

Corona-Impfungen: Diese Länder liegen aktuell vorne - ZDFheute

 

ドイツのコロナウイルスワクチン優先接種について

優先的にワクチン接種ができる人について、ドイツは3つのグループを示しており、年齢や職業、持病の有無などによって優先順位が振り分けられています。抜粋ではありますが、少しご紹介したいと思います。

全て見たい方はこちらをどうぞ↓

Corona-Impfung: Wer kann sich wann impfen lassen?

 

グループ1
  • 80歳以上
  • 病院で治療を受けている人
  • 外来診療看護スタッフ
  • 集中治療室、救急、予防接種センター及びコロナウイルス患者対応を行う医療スタッフ

など

グループ2
  • 70歳以上
  • 認知症や知的障がい、双極性障がい、統合失調症、重度のうつ病のある人
  • 重度の肺疾患、神経筋疾患、合併症のある真性糖尿病、肝疾患、腎臓病、BMI値40を越える肥満である人
  • 精神障がい者の入院施設やケア施設で働く人々
  • デモの際に勤務中の感染リスクが高い警察や救急隊。海外派遣による感染リスクが高い兵士
  •  医療設備が不十分な海外赴任地で働くNGO職員や財団、組織で働く人
  • 教育機関で働く人

など

グループ3
  • 60歳以上
  • 癌疾患、HIV、自己免疫疾患、リウマチ性疾患、心不全不整脈脳卒中、喘息、炎症性腸疾患、合併症のない真性糖尿病、BMI30以上の肥満の人
  • 憲法期間、政府、軍隊、警察、税関、消防隊、災害管理等で働く人
  • 選挙スタッフ
  • 薬局や製薬、葬儀、食品、上下水道、廃棄物管理、輸送、交通、情報技術、テレコミュニケーションなどの重要なインフラを支える機関や企業
  • 食品小売部門で働く人
  • 青少年福祉の施設で働く人

など

 

個人的にはBMI指数で肥満とされる人も含まれているところにびっくりしました。

 

外国人でもグループに当てはまれば優先接種が可能

先述した優先順位については特に国籍の条件がないため、私もグループ3に該当する職種だということでワクチンの予約をしました。持病ではなく、職業で優先接種が認められる人については、会社からの文書(会社が用意したフォーマットに雇用主のサインと自分のサインが必要)をワクチン接種会場へ証明として持っていく必要があります。

 

ワクチン接種の予約は至難の業!?

4月21日からグループ3に属する人たちのオンライン予約が始まったザクセン州ポータルサイトでアカウントを作成した後、ログインして予約を取り付けるという工程なのですが、アクセスが集中しすぎたためか、なかなか予約が取れない状況が続いていました。そんな中、8人のアポを取ることに成功したという強者の同僚が私のアポを取ってくれるということで、5月7日(金)に粘り強くサイトにアクセスし続け、ついにアポイントメントを取り付けてくれました。彼女は別の同僚の分も立て続けに成功させ、最終的には累計13人分の予約を完了。ポイントは、深夜の12時過ぎにアクセスすること、それがダメなら、追加のアポイントメントが開放される日にサイトにアクセスし、「戻る」「進む」のボタンをひたすら押し続けるということだそう。今回私の分は後者のやり方で取ってくれましたが、彼女自身は週末の深夜にダメ元で試してみて成功したのが始まりだそうです。オンライン予約でうまくいかない方は、ぜひあきらめずにトライし続けてみてください。

 

ワクチン接種についての職場での反応

私の部署は今月全員1回目のワクチン接種を終える予定で、その中で不安があると言っている人はごくわずか。ちなみに、会社の方からは、優先接種を受ける際に必要となる文書を発布するので、興味があれば利用してほしい、という全体メールがあり、特にワクチン接種を強制するというわけではありませんでした。まだ予約をしていないと話す同僚も、打ちたくないというわけではなく、本当に必要とする人が(ワクチン接種を)終わってからでいい、ということを話してくれたので、私の職場ではワクチン接種を好意的に受け止めている人が多いのではないかと感じました。私がワクチン接種を受けると決めたのは、打つリスクと打たないリスクを天秤にかけたときに、打たないで感染して重症化するほうが恐ろしいと思ったためです。さらに、ホームオフィスができない以上、通勤及び仕事上での感染リスクは減らないということから、早めに接種ができるように会社は協力すべきであると思っていたので、今回の優先接種の話を迅速に伝えてもらえてよかったと感じました。(ちなみに、現在ドイツでは、雇用主はできる限りホームオフィスを推進するよう義務付けられています。)

 

ワクチン接種に反対するあるメディアとファクトチェックについて

一本の動画

先に述べたワクチンについて不安に思っている同僚についてですが、彼女は友人からワクチンを打った人が多く亡くなっているという動画をシェアされたと話していました。また、私も日本に住む友人から内容的には同じ趣旨の動画を教えてもらいました。同僚が友人から教えてもらったという動画の詳細はわかりませんが、おそらく同じものではないかと思います。私が見た動画はkla tv =Klagemauer TV(嘆きの壁テレビ)というイヴォ サセク(Ivo Sasek)氏が設立したメディアから発信され、フェイスブックを使って拡散されているようです。私の友人は「kla tv」というメディアがどのような局なのか知りたいということで動画を送ってくれたのですが、私も今回初めてこのメディアの存在を知りました。動画は、簡単に言うと、十分な治験が行われないまま、人命を犠牲にしてワクチン接種が人体実験のように行われていると主張し、ワクチン接種をやめるよう人々に呼びかけるものです。

ファクトチェックの結果は?

ドイツでは、2014年にファクトチェックの機関としてコレクティブ (CORRECTIV - Research for Society) という非営利組織が「ドイツ全土のメディア組織が有益な調査報道にアクセスできるようにする」というイデオロギーのもとで立ち上がり、フェイクニュースの真偽を確認する上で中心的な役割を担っています。そのコレクティブが2021年5月12日に出した記事では、先述のkla tvの動画の主張は、ソースが誤った文脈で使われたり、数値的な情報が間違っている部分があったり、事実と異なる認識が論拠になっていたりするとして、ほとんど間違っていると結論づけています。

Ivo Sasekとは

チューリッヒ出身のイヴォ サセク氏は1997年にオーガニックキリストジェネレーション Organic Christ Generation(OCG)と呼ばれる新興宗教を創立。2012年に設立されたkla tvは彼の思想を広めるためのプラットフォームとして機能。雑誌の刊行や自身の著作も出版しており、2011年には聖書を自分たちの解釈で翻訳もしています。陰謀説や反ユダヤ主義的主張を展開し、2008年には2000人ほどいた信者も今は少なくなっているほか、自身の11人の子どもの中の2人は宗派から離脱した後、その1人にYouTubeで宗派から抜け出したい人へ向けた動画を配信されるということも。

動画とファクトチェックについて思うこと

動画に関しては、人々の不安を煽り、政府への反感を高める材料として使われているように感じましたが、一人ひとりが能動的に動くべきだという主張には共感させられました。ただ、ワクチン接種をやめたとして、その後コロナウイルスにどのように対処していくべきかという指針が示されておらず、結果kla tvの主張についていく人は少ないのではないかなと思いました。一方で、ファクトチェックの記事については、どれだけ中立を保てているのかどうかが私自身判断ができないのですが、グーグル翻訳でぱっと見た感じ、なんとなく政府寄りな印象も受けました。コレクティブ自体に対しては意義のある団体だと感じるので、第三者機関として、そして市民の目や耳としてどのような活動をしていくのか見守りたいと思います。

 

 以上、長くなってしまいましたが、ワクチン接種についてでした。また接種についてはここで書こうと思っているので、レポートをお待ち下さい。

 

<参考にした記事、ウェブサイト>

ワクチン接種状況について

Corona-Impfungen: Diese Länder liegen aktuell vorne - ZDFheute

ドイツの優先接種グループについて

Corona-Impfung: Wer kann sich wann impfen lassen?

 kla tvの動画に対するコレクティブのファクトチェック記事

„Weckruf“ von Kla.tv über angebliche Corona-Impfschäden führt in die Irre

Ivo Sasekについて

ZEIT ONLINE | Lesen Sie zeit.de mit Werbung oder im PUR-Abo. Sie haben die Wahl.

Ivo SasekとOCGについて

Organische Christus-Generation OCG – Relinfo.ch

コレクティブについて

ドイツの新興メディア「Correctiv(コレクティブ)」は、読者とこうやってつながっている(小林恭子) - 個人 - Yahoo!ニュース