ドイツ生活 徒然記

ドイツでの生活も6年目がスタート。日々体験したことや感じたことを書いていきます。

ミナペルホネン Design=Memory展 スウェーデン国立美術館に行ってきました!

気が付けば3月も半ば、ドレスデンもだんだんと暖かくなってきました。2月末日にゲーテのドイツ語オンラインコース(オンライン教材を自分で進めるタイプ)を申し込んだのですが、2週間以上経ったのに進捗率4%…。ぼーっとしてたら3か月の期限が終わっちゃいそうなので頑張りたいと思います…。

さて、今日は先月にスウェーデンへ行ったときのことを記しておきたいと思います。

<目次>

旅行するきっかけとなったミナペルホネンの展示会

スウェーデン国立美術館でファッションブランド、ミナペルホネンの展示会が催されると知ったのはSNS経由でした。さらに、デザイナーの皆川さんが会期初日に会場で対談されるという情報もあり、それを見た瞬間からこんな機会二度と訪れないという直感によって有給休暇申請手続きと仕事の段取りが頭を駆け巡りました(真剣)

 

ミナペルホネンとは

そもそもミナペルホネンとはなんぞや、という方のためにほんの少しだけ語ります!デザイナー皆川明さんが1995年に立ち上げた「minä」というブランドがもともとの始まりで、2003年に「minä perhonen」に名前が変更されました。テキスタイルを1からデザインし、日本の工場の匠の技を活かして布を作り、その布から仕立て上げられる洋服たちは1点1点が芸術作品のよう。当初から「100年は続くブランド」という指針を持って立ち上げられ、タイムレスなデザインと在庫を持たない経営で、セールをすることが当たり前の服飾業界やファストファッションに疑問を投げかける、あまり類を見ないブランドです。発起人の皆川さんはいくつもの自著の中で、持続可能なサイクルに立ち返るべきであると徹頭徹尾言い続けているんです。ちなみにミナというのはフィンランド語で「私」、ペルホネンは「蝶」という意味です。本ブログでは以前東京での展覧会について触れていますので、そちらもよかったらご覧ください。

 

www.et-chandon.com

 

 

Design=Memory展の会場 スウェーデン国立美術館

スウェーデン国立美術館

今回展示会場となったのはストックホルムにあるスウェーデン国立美術館。ミナペルホネン発起人の皆川さんが若かりし頃にデザイナーを志すきっかけとなったのが北欧旅行で出会った一着のコートでした。ミナペルホネンの活動を通じて多くの北欧のデザイナーたちとコラボする中で、このスウェーデン国立美術館で展示をする縁が生まれ、今回の開催に至ったようです。

Design=Memory展概要

SNSで皆川さんがまた会期中にストックホルムを訪れたい、と書かれていたので、もしかするとまたなにかイベントが企画されるのではないかと密かに期待しています。

スウェーデン国立美術館年間パスポートについて

スウェーデン国立美術館 年間パスポート

こちらの年パスは購入日から365日有効です。通常の入場券を購入すると丸いステッカーをもらえて、それを身体のどこかに貼るのですが、こちらの年パスも受付で提示して同じステッカーをもらう必要があります。美術館併設カフェやミュージアムショップでの購入が10%引きになる特典つき!2回以上訪問する予定がある方はこちらの年パスがおすすめです。

スウェーデン国立美術館 施設について

1階部分の中庭は無料で見学可能

2018年にリニューアルオープンしたスウェーデン国立美術館の館内はとても明るくきれいでした!カフェやミュージアムショップ、イベントスペースと中庭は無料で誰でも見学ができます。

ロッカー&トイレ

40x38x36 cm以上の大きさのバッグは持ち込みができませんのでご注意ください。なお、ロッカーのサイズも上記のものとわずかに40x38x47 cmのものがあるのみとなっています。

地下にロッカーとお手洗いがあります

自分で暗証番号を設定するコインレスのロッカー

お手洗いは個室が写真のように立ち並び、全て男女共用
イベントスペース(Sousth Courtyard)

2024年2月22日に行われた皆川さん、インゲヤードさんの対談

皆川さんらの対談後に行われたAoi Yamadaさんのパフォーマンス

美術館の入口を入って吹き抜けを抜け、右手にこちらのイベントスペースがあります。このスペースは入館料なしで見学することができます。今回会期初日に行われた皆川さんとインゲヤードさんの対談、そしてAoi Yamadaさんのパフォーマンスはこちらが会場として使われ、立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。

Design=Memory展 展示内容

ここからはいよいよ展示を写真で紹介したいと思います。

Design=Memory展

歴代の作品たち

2024年2月22日~2月24日に行われたライブペインティング

完成作品『Minnesskog』

テキスタイルのデザイン画、スケッチなど

タンバリンという名前のテキスタイル

布地を無駄なく使う工夫

くるみボタンが可愛らしい

セラミック・ガラスデザイナー インゲヤード・ローマンさんとのコラボ

2024年3月11日に逝去されたリサ・ラーソンさんとのコラボ作品

様々なコラボ作品

今回の展示の注目ポイントの1つはインゲヤードさんとの初めてのコラボレーション作品が公開されたこと。普段はガラスやセラミックのデザインをしている、スウェーデンを代表するデザイナーであるインゲヤードさん(御年なんと80歳)。彼女がちぎり絵で表現したデザイン画を皆川さんが解釈し、工場と技法を話し合って作り上げた作品が展示されています。

もう1つの目玉は2月22日から24日まで皆川さんによるライブペインティングが行われたこと。作業の合間には直接皆川さんとお話したり、写真撮影をお願いすることができて、ミナペルホネンファンとしては感無量でした。絵については、ある程度余白を残して描きすぎない状態で完成させたそうです。描かれた模様について、幾何学模様と自然な要素とを一緒に描いたとおっしゃっていました。それにしてもたった数日で、しかもなにも事前に決めずに、ライブペインティングという見られている中で絵を完成させてしまうってすごいことだなぁと思いました。一緒に行った夫はミナペルホネンについてなにも知らずについてきてくれたのですが、現役デザイナーのライブペインティングを見て非常に感銘を受けていました。

皆川さんとインゲヤードさんの対談とAoi Yamadaさんのパフォーマンス

ここでは2024年2月22日に行われたイベントに参加して私が感じたことをまとめておきたいと思います。

対談について

私たちは2月22日会期初日の夜18時からのイベントに間に合うよう16時頃に美術館に入り、展示を見学してから対話イベントに臨みました。印象に残ったお話としては、司会を務めたスザンナ・ペッターソンさん(国立美術館の前責任者)が問いかけた、デザイナーになったきっかけについて。皆川さんは予算の少ない貧乏旅行で北欧を旅していたとき、まだ始まったばかりの旅路で運命的なコートに出会います。これからの旅程のためにお金を残しておかなければならないはずなのに、どうしてもそのコートを手に入れる必要がある、となけなしのお金をほとんどその一着を購入するために使ってしまったそうです。一方で、インゲヤードさんは自分はそんなにドラマチックなものではなかったと前置きした上で、文章を書くことが苦手だったため、言葉を使わず、かつ一人で作業し、進めていけるデザイナーという仕事が自分に合っていたからだ、とお話されていました。機能的でありながら静謐な美しさがある彼女の作品に、彼女の論理的で無駄を省く思考が反映されているのだろうなーと納得しました。皆川さんは終始ゆっくり語り掛けるように日本語でお話され、文化プロデューサーとして今回の展示に携わった迫村裕子さんが同時通訳をされていました。迫村さんはどうやら急遽同時通訳として壇上に上がったようで、もともとは企画側の方だったみたいです。迫村さんは司会のスザンナさんとは10年以上共同でプロジェクトに携わり、一緒に本も出版しているんだとか。

Aoi Yamadaさんのパフォーマンス

Aoi Yamadaさんのことは映画パーフェクトデイズに出演されている、ということと宇多田ヒカルさんの新曲の振り付けを担当された、ということくらいしか知りませんでした。今回初めてパフォーマンスを間近で見て、ミナペルホネンとAoiさんがすごく興味深い組み合わせだったんだと一人興奮。冒頭、音楽とともにAoiさんは会場の外、廊下でダンスを始め、窓越しに私たちの方に何かを訴えているかのような非常に興味を掻き立てるシーンから始まりました。音楽はなんだか不安を煽るような、そして照明も暗く妖しい色使いでドキドキ。そして上着を脱ぎ去って私たちのいる会場の中へ入ってきたかと思うと客席の空いている席に座ったり、椅子の下をくぐったり紆余曲折を経て舞台へ。最後は音楽も穏やかなものになっていき、彼女は舞台からまた会場外へ走り去っていく…。個人的解釈でしかありませんが、自分らしさとはなにか苦悩する場面から始まり、さなぎが羽化するように成長し、最後には本当の自分を見つけて飛び去って行く、そんな印象を受けました。ミナペルホネンの作品は可愛らしくてメルヘンチックな部分もありますが、それだけではなく、グリム童話のように人間のどろどろした部分も含めて自分なのだ、と自己を見つめて認めていく過程をAoiさんが表現しているのだと感じました。彼女がミナペルホネンのモデルとして起用された理由が今回パフォーマンスを観てわかった気がします。

 

終わりに

この度のストックホルム訪問では中学生時代からファンだったミナペルホネンのデザイナー皆川さんと展示会場でお会いできて、しかもお話ができて本当に嬉しかったです。また、会場では日本からこのためにストックホルムに来た熱いファンの方々とも交流ができ、一緒に心躍る体験を共有できたことが深く心に刻まれました。みなさんミナペルホネンのコートに身を包み、いきいきとした表情で大変格好よかったです。自分でお金を稼げるようになったらミナペルホネンの服を買うんだ!と憧れを強く抱いていた中学生の私は、将来ストックホルムの展覧会で皆川さんとお話することになるとは全く想像していませんでした。さらに、ストックホルムはおしゃれでご飯も美味しく、とっても素敵な都市だということが今回わかったので、また是非再訪したいと思います。

長くなってしまいましたが、今回も読んでいただきありがとうございます!次回は今回触れられなかったミナペルホネンDesign=Memory展 のグッズ、ミュージアムショップについて書きたいと思います!また遊びにきてください♪それではまた!